マルチチャネルとどう違う?オムニチャネルとは?

今回は「オムニチャネル」を取り上げます。

マルチチャネルとはいう言葉は聞いたことがある方が多いと思いますが、オムニチャネルという言葉はあまり聞き慣れないのではないでしょうか?

マルチチャネルとは、流通において実店舗・ウェブ・TV・ラジオ通販など、複数の販売経路を顧客に合わせて使い分ける手法のことです。たとえば、百貨店では、実店舗で高級なブランドを売る一方で、ウェブでは若年層に特化した安価なブランドを売るといったように、チャネル毎に顧客や商品を売り分けることに主眼を置いた考え方で、売り手が起点となった戦略です。

一方、オムニチャネルは、実店舗やウェブ、ソーシャルメディア、テレビ、DMなどオフラインを含むあらゆるチャネルを統合する考え方です。顧客を起点にして、あらゆる顧客接点を連携させることで、商品の認知から購買に至る全てのプロセスにおいて、 たとえどのチャネルを経由しても、シームレスに買い物ができる環境を作ろうとするものです。

たとえば、ある顧客は、重いものや大きなものはウェブ通販で購入して配送してもらいますが、小さくて現物を見て持ち帰りたいものは店舗で購入します。他にも、店舗でいくつかの商品を見比べ、欲しいものを見つかったら、ウェブで検索して最安値で購入し、コンビニで受け取るといった場合もあります。

つまり、一人の顧客が、商品やサービスを購入する際、ウェブとリアルの間を行ったり来たりするのが現在のプロセスです。
こうした顧客の様々な購入パターンに対応し、利便性を高めようとするのが、オムニチャネルの考え方です。

スマートフォンの普及により、こうした購買行動が加速している中で、マルチチャネルの考え方では顧客の購買行動の変化に追いつけません。そのため、ウェブと実店舗を一元化し、顧客の利便性を高め、顧客接点を最大化することで、販売機会を増やすことが求められるのは、自然な流れです。こうした背景で、今、流通業を中心にオムニチャネルが注目されているのです。

オムニチャネルという言葉は、2011年1月にアメリカ小売業協会(NRF)が公表しました。その後、米国の百貨店Macy’sが、「オムニチャネル企業」を宣言し、それを実践することで、オンライン販売を前年比40%増に急成長させたことで有名になりました。日本でも、セブン&アイ・ホールディングスほか、いくつかの流通企業が取り組みを開始しています。

医薬品マーケティングにおいては、消費財とは異なり、流通チャネルがここまでに説明したような購入パターンにはなりません。したがって、このままオムニチャネルのコンセプトを当てはめることはできません。

しかし、マーケティングコミュニケーションでは、このコンセプトがヒントになりそうです。それは、医療者の情報収集パターンが、リアルとウェブを行った来たりするからです。

今、医療者と製薬企業のコミュニケーションのポイントは、MR、学会、セミナーなどのリアルな場と、自社の医療者向けウェブサイト、医学系ポータルサイト、SNSなどウェブ上と多岐に亘っています。

それらのデータをいかに管理・統合するか?集めたデータをどう分析して活かすか?普及するスマートフォンを、コンテンツやサービス提供のデバイスとしていかに活用できるか?といった観点で考えれば、流通業におけるオムニチャネルと医薬品マーケティングのコミュニケーションの課題は共通です。

これらの課題と対峙し、解決策を見つけることができれば、より適切なコミュニケーション戦略が実現できるのではないでしょうか?今、流通で取り組んでいるオムニチャネルのモデルを観察しておくことで、多くのヒントが見つけられそうですね。