「インフルエンサー」とは

今回の用語は「インフルエンサー」です。

昨今、消費者は、企業から発信される広告・メッセージよりも、ブログやSNSといった、消費者が生み出す「口コミ」型のメディア、つまりCGM(Consumer Generated Media)を重視する傾向が高まってきました。

このCGMにおいて、大きな影響力を持つ人々のことを「インフルエンサー」と呼びます。

たとえば、ある芸能人のブログが1日に10万件以上のアクセスを集めていることはお聞きになったことがあるかと思います。
また、1000万人の会員を集めているSNS「mixi」では、数万人の会員が毎日のように情報を交換するコミュニティと呼ばれるグループがいくつも存在しています。
多くのアクセスを集めるブログを執筆したり、多数が参加するコミュニティの運営をおこなったりする人は、そこにアクセスした消費者の多大な影響を与えることになりますから、「インフルエンサー」だと言えるのです。

実際に多くのアクセスを集めているブログをみていただきましょう。
若槻千夏ブログ

彼女は「アイドル」としてテレビに出演していますが、ブログでは自身が出演した番組や芸能界の裏話を、建前ではなく本音で書き込んでいると話題になっています。
実際、番組中に急にトイレに行きたくなった、など、女性芸能人が書きづらいような内容もブログに書いているのです。

そのため、本音が読めるブログとして、非常に多くのアクセスを集めています。昨年末に、体調不良で更新を休む、と書き込んだことが「引退宣言」と報道されるほどに、マスコミを始め多くの人が彼女のブログに注目していることを記憶されている方もおられるのではないでしょうか。

実際に、彼女のブログで取り上げられた商品が大ヒットしたこともありますし、コミュニティに参加している人たちが、企業に向けてサービスの改善を要望し、そのサービスが改善された、といった例もあります。

1月8日に松下電器が、動画提供サイト「ユーチューブ」が見られるテレビを売り出すと発表したり、「視聴率30%超」といった「お化け番組」がなくなったりと、既存のマスメディアの影響力の減少を物語るニュースがありました。

このように、今後、ますますインターネットの利用が拡大するでしょうから、「インフルエンサー」の影響力は、テレビ・新聞・雑誌といったマスコミに並ぶほど大きくなると言えるでしょう。

さて、医薬品マーケティングでは、特定の領域や疾患において、「インフルエンサー」といえる、大きな影響力を持った医師が数多くおられます。
医薬品業界では、この呼び方よりも「KOL=Key Opinion Leader」という呼び方が普通です。
ウェブマーケティング以前から、こうした「KOL」に、「記事体広告」「セミナー」などの際に、「監修者」「演者」として協力していただくことは、非常になじみの深い方法であることは、周知のとおりです。

こうしたKOLが、自分自身のメディアであるブログなどを開設し、個人的に情報を発信したり、医療従事者専用のインターネットコミュニティにおける医師同士の情報交換が活発化するようになれば、そうしたメディア影響力が増すことになります。
また、それほど著名な医師でなくても、多くのアクセスを集めるブログを書く、比較的若手の医師も現れています。

従来の「リアル」の世界では、演者を依頼する場合であれ、監修を依頼する場合であれ、ある程度は発信する情報を「コントロール」することができましたが、自発的に開設したブログやコミュニティで、「KOL=インフルエンサー」の発信する情報そのものを、企業がコントロールすることはできません。

こうした状況において、医薬品企業がとれる「打ち手」はなんでしょうか?

1.   関係性のマネジメントの一層の強化
従来から製薬企業が注力していたKOLとの関係性強化に加えて、無名でも自分自身のメディアを持つ医師の調査と関係性の構築も考える。

2.  適切な情報の継続的提供
自社の事業ドメインに関連する医学・薬学コンテンツの一層の充実と継続的更新・追加を行うことで、「インフルエンサー」が参照できる情報インフラを強化する。

3.  情報発信サポートツールの提供
「インフルエンサー」が、ブログやコミュニティで情報を取り上げやすい仕組みとして、「RSS配信」をおこなう、引用可能な良質のコンテンツを準備しリンクを用意する、といった便利な機能を提供する。

今後、医薬品マーケティングにおいても、インターネット上での「口コミ」が起こりやすくなっていくことは明らかです。
2008年は、こうした環境変化に対して、「考え方」「方法論」を、具体的に検討すべき時期ではないでしょうか。