『ファスト&スロー』から学ぶコンテンツマーケティング

さて、今回はDTCマーケティングにおける今後の疾患啓発コンテンツのあり方について、「行動経済学」の考え方が、
コンテンツマーケティングにも応用可能であることに触れてみます。

行動経済学とは、典型的な経済学のような「ロジック」で動く経済人を前提とするのではなく、実際の人間による実験や、その観察を重視し、人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明しようとする「心理学的側面」と「経済学的側面」をあわせもつ学問です。
2002年に、ダニエル・カーネマン博士がノーベル経済学賞を受賞したことで、
その名が知られることになりました。

今回は、そのダニエル・カーネマン博士の著書「ファスト&スロー」で提唱される
人間の2つの思考モードとコンテンツマーケティングへの活用法です。

カーネマン博士は人間の脳の思考モードは、
「システム1」と「システム2」の2つがあり、人が情報処理をする場合には、
順番にこの2つが作動すると提唱しました。

【システム1】
・脳への負担を下げるために自動的に高速(ファスト=Fast)で動く思考
・努力はまったく不要か、必要であってもわずか
・自分の意思で思考をコントロールしている感覚はない
・見たまま、感じたままに直観的、感情的に捉える思考モード

【システム2】
・複雑な計算など、意識的に頭を使わなければできない知的活動の際に、
 じっくり(スロー=Slow)と動く思考
・「考える」努力が必要
・自分の意思で思考をコントロールしている、つまり「考えている」という感覚がある
・物事を順序立て、論理的、合理的、客観的に理解しようとする思考モード

ものすごく簡単に言えば、「人の脳は、出会った物事を、最初に感覚的、
直観的に捉えた後で、ゆっくりと考えるようにできている」というものです。

このことを、DTCマーケティングでどう活かせるのでしょうか?

「疾患啓発」のコンテンツのKGI(Key Goal Indicator)は、「潜在患者の受診」です。
つまり、「行動」を起こしていただくことです。

人の脳が「システム1」→「システム2」の流れで作動するなら、
疾患啓発のコンテンツは、まず、脳の負担を少なくすることが大切になります。
次いでコンテンツの内容が、「筋道だてて書かれている」「論理的である」ことも大切です。

医薬品企業の疾患啓発のコンテンツのほとんどが「システム2」には十分配慮されていると思います。
一方、「システム1」はいかがでしょうか?

コンテンツを見た一般の方や潜在患者さんが、そのコンテンツで「感情」が動くでしょうか。
もちろん、この考え方は、医療従事者向けウェブサイトのコンテンツでも同じです。
一度、自社のコンテンツが、「ファスト&スロー」の両方を意識した作りになっているかチェックしてみてはいかがでしょうか?

次回は、「ファスト&スロー」の両方を意識したコンテンツのポイントをご紹介します。

このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。