「炎上」とは

今回は「炎上」という言葉を取り上げます。

今では多くの人がブログを書くようになりましたので、みなさんもいくつかはご覧になられたことがあるかと思います。
こうしたブログには、記事に対して、読んだ人がコメントを記入することができるようになっています。
また、読み手自身がブロガーであれば、トラックバックといって、お互いのブログをリンクさせて、自分のブログで意見を述べることも簡単にできるようになっています。

ブログが急速に広まった理由の一つには、こうしたコメントやトラックバックで、書き手が読み手と簡単にコミュニケーションを取ることができることにもあると言われています。
企業がブログを構築して情報発信を行う場合にも、読み手である生活者は「コメント」や「トラックバック」といった機能を簡単に使うことができます。
企業がこうしたやり取りにおいて、生活者と良好な関係を築くことができれば、企業にとって好意的なコメントやトラックバックを残しますので、それを読む他の生活者との間にも信頼感が生まれる可能性が高まります。
さらに、そうした生活者が「よい口コミ」を発信してくれれば、ブログは強力なマーケティング手段となり得ます。

しかし、企業が品質の悪い商品を出したり、広告と商品の乖離が大きかったりした場合、特定の記事に批判的なコメントやトラックバックがついてしまうこともあります。
あるいは、企業と生活者のコミュニケーションの不味さから、ブロガーの思いこみや失言がきっかけで、同様のことが起こることもあります。
そうしたコメントやトラックバックが、急速に他のブロガーや生活者に広まり、最終的に内容への誹謗中傷に加えて、ブロガーへの個人攻撃にさえ発展してしまう状態を「炎上」と呼びます。

他にも、
コメント欄に関係者が「やらせ」のコメントを書き込む、
批判的な意見や質問を無視する、
コメントを一方的に削除する、
などによっても「炎上」が発生します。

「炎上」は、一旦発生してしまうと、インターネット掲示板などで、そのブログが取り上げられ、これまで閲覧したことのない人までもがコメントを書き込んでいくことから、ウェブサイトが閉鎖に追い込まれてしまうことも少なくありません。
実際、掲示板などでは、ブログが「炎上」していることを「祭り」と呼んで、面白半分にブログを訪れることもあるようです。

これまでにも芸能人のブログが「炎上」したことで閉鎖したり、ある企業の社員が個人的に書いていたブログが炎上したことがきっかけで、その企業のウェブサイトにまで「炎上」が拡大したり、といったことがありました。

また、日経メディカルに掲載されていた、医療コンサルタントのブログに、医療従事者からの批判が数多く書き込まれた結果、そのブログが閉鎖されてしまったこともありました。
これは、内容に対しての批判が集中した結果であり、「炎上」とは呼べないかもしれませんが、コメント欄だけの言葉のやり取りがいかに難しいものであるかを考えさせられる事例でした。

では、こうした「炎上」は医薬品マーケティングでも起こり得るのか、またどのように防止できるのかを考えてみたいと思います。

医師向けウェブサイトでは、閲覧者が限定されていることから、内容に対しての疑問・質問がでることはあっても、それが「炎上」に発展することは少ないと思われます。
むしろ、そうした疑問・質問への回答することで、より有益な情報がウェブサイトに蓄積される可能性が高く、医療従事者とのコミュニケーションを図ることができる「Web2.0」的なメディアはメリットが大きいと言えるでしょう。

また、医療消費者向けのブログをマーケティングの手段として利用する場合でも、運営の方針を明確にし、利用者に対して適切に、そして誠実に対応することで、ほとんどの場合、「炎上」を防ぐことが可能です。
ウェブサイトにアクセスする医療消費者は、現在・未来の自社製品の利用者となる存在ですから、ウェブサイトにおける誠実な対応は、自社への信頼を高めることができる重要なチャンスでしょう。

現在、ブログやSNSといった、消費財のマーケティングで利用されている「Web2.0」的なメディアは、今後、医薬品マーケティングにおいても活用が進んでいくことでしょう。
医薬品マーケティングにおいては、閲覧者が医療従事者である場合、その職業的にも責任感・倫理感の高い方が多いことから、炎上の危険性は少ないと考えられます。
したがって、自社イメージを損なうことがないよう、配信する情報のエビデンスを明示したり、適切かつ豊富なコンテンツなどが準備できれば、ブログは有用な医薬品マーケティング手段となるのではないでしょうか。