医薬品でコミュニティーマーケティングは可能?

さて、コミュニティーマーケティングとは、
企業とコミュニティあるいはコミュニティへの参加者同士のコミュニケーションを通して、企業とコミュニティの双方にとってのメリットを生み出そうとするマーケティングでした。

今回は、その事例や医薬品マーケティングへの応用を考えてみます。

有名な成功事例が、米国のスターバックスのケースです。

米スターバックスでは、オンラインコミュニティプラットフォームを作って、「共創」をテーマに多くのアイデアを募っています。
具体的には、スターバックスのファンからの意見やフィードバックを
オンライン上で集め、商品開発や改善に活用しているのです。
スターバックスが、過去から積み上げてきたブランドを利用して
熱狂的なファンを巻き込んだ事例です。

日本で有名な事例は、ネスレのコーヒーマシン「ネスカフェ バリスタ」のケース。

ネスカフェアンバサダーを通して、オフィスや店舗などにコーヒーマシンの
設置台数を増やしました。
オフィスという「コミュニティ」にネスカフェのファンであり、コーヒーマシンを通してオフィスに笑顔とくつろぎを与えることを任務とする「ネスカフェ アンバサダー」を増やすことによって、日本全国、大小を問わないオフィスにマシンの設置を広げることに成功しました。
これは、ファンが営業マンとして活動した事例です。

こうした成功事例がある一方で、うまくいかないケースも多いようです。

ところで、医薬品マーケティングでアドバイザリーボード(諮問委員会)は
どう展開できるでしょうか?

医薬品マーケティングでよく行われるのは、
治療領域のTop KOL(キーオピニオンリーダー)を数名から10名ほど組織化してアドバイザリーボードを設立し、製品ポジショニングやコミュニケーション戦略のアドバイスをもらう方法です。
アドバイザリーボードからアドバイスしていただいた内容を情報発信して
広く情報を伝搬させる手法です。
専門性が高い医薬品マーケティングでは、Top KOLの専門性や権威性は重要なので、この方法がよく使われています。

実際、当社でもいくつものアドバイザリーボードの設立やミーティングなどの運営に関わってきました。

しかし、この手法はコミュニティマーケティングとは違いますね。

私自身も医薬品のコミュニティーマーケティングの事例は知りませんが、
成功のためには、少なくとも短期的には「自社製品を売る」ことを重視せず、「治療領域」への貢献を全面に出すことが重要ではないかと思います。

そのためKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)から、
売上や処方に関連する指標を外した方が良いと考えます。

医薬品マーケティングでコミュニティーマーケティングを行うとすれば、

・地位や権威などは意識せず、特定の治療領域、疾患の治療に強い情熱を持った医師に集まっていただく
・必ずしも自社製品を使ってもらうことがゴールではなく、最も良い治療法へのアイデアを募る
・その中で自社製品が役立つ病態や患者さんがいれば、それ自体は深く議論していただく

ことを目的とした、フランクに議論できる場が必要だと思います。

こうした場を製薬企業が生み出すことができれば、
中長期的には自社のファンとなる医師の増加につながったり、薬物治療の進化、新薬開発のヒントなども得ることができるのではないでしょうか?

次回は、コミュニティーマーケティング成功のポイントをまとめてみます。

このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。