「アマゾンのロングテールは、二度笑う」 鈴木 貴博

タイトルからはIT関係の書籍かと思われる方もおられるでしょうが、実際には、アマゾンを含め8つの例を挙げて、企業戦略について述べられています。

その中で、常に主張されていることは「自らに有利なビジネスの土俵を選ぶこと」です。

松下電器、スターバックス、ウィンドウズ(マイクロソフト)など、身近な企業を例に取り、いかに優秀であってもビジネスの領域を時代に合わせてシフトしていかなければ衰退は避けられないことを説明しています。

実際に、在庫を持たない書店であるアマゾンはアメリカ最大手の書店に比べ、ROA(総資産純利益率:資産に占める純利益の割合)が2倍の水準となり、同社のビジネスモデル、つまりこの「リアル書店とは違う土俵を選んだ」ことの先見性、卓越性を証明しています。

また、イトーヨーカドーの利益は子会社であったセブンイレブンの足下に遠く及ばない状態となってしまっていることは、「コンビニエンスストア」という業態が、今の時代にマッチしているが、「スーパー」という業態が、もはやマッチしなくなっていることを表しています。つまり、「選ぶべき土俵」は時代や環境によって変化することを示しています。

筆者は、第2章「同質化と差異化を考える」において、これまで多くの企業が行ってきた同質化戦略そのものを見直す場面が多くなることを示唆しています。
「製品以外の部分で差異化を仕掛けていく方向」への転換に、どのような考え方・アイデアが効果的であるのか、新しい技術を知ることも含め、常に頭の中で意識することの必要性を感じました。

医薬品経営戦略においても、「メガファーマ」「スペシャリティファーマ」「ジェネリック」「OTCファーマ」の中でどれが自社の強みを活かせる道かを考えることの重要性がこの書籍からも示唆されます。

医薬品マーケティングにおいては、有利な土俵を選ぶ自由度は小さいかも知れませんが、「製品ポジショニング」の決定が「戦う土俵を決める」ことになりますから、できるだけ勝ちやすい=差別化しやすいポジショニングをとることが重要であることが示唆されます。

ビジネスにおける戦略とは、「どう戦うのかではなく、戦わずに成長することである」ということを忘れずに、新たなアイデアを求め、マーケティングのヒントとしていきたいと思います。
(山内)

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