本書は、医薬品マーケティングを、過去から現在、そして未来といった時間軸、そして医薬品マーケティングを取り巻く環境の変化に加え、マーケティング部門、 営業部門などの製薬企業内の組織のあり方、更には医療業界の展望など幅広い観点から俯瞰し、提言を記した最新の医薬品マーケティングに関する書籍です。
著者は、本書タイトルになっている 「ハイブリッドマーケティング」の考え方を「旧来の優れた点は大切にし、それをベースに欧米の進取的マーケティング手法や他業界の販売戦略セオリーの競争優位性を受け入れ“昇華”していく体制作りが、最も大切な経営課題である。」としています。
医薬品マーケティングの特殊性は考慮しながらも、他業種・他業界から学び良いものは取り入れる、またITに関しても「ツール」として 、マーケティングに取り入れることを提唱していますが、今後、医薬品のマーケティング戦略を組み立てる上で、こうした考え方が必須になってくることは大いに賛同します。
第3章 マーケテ ィングの基本原則」の中で提唱されている「BIGCELt理論」に関してですが、この理論で「従来のマーケティングの基本であった3C分析、SWOT分析、STPなどすべてを網羅する」ということですが、 出来上がったマーケティングプランをチェックするには役立つものの、この理論をもとにマーケティングプランを組み立ててるのは難しいのではないかと感じました。
私の理解力不足もありますが、 もう少し実務的な使い方の説明があったほうが良いのではないかと感じました。
全体的には、昨今、医療を取り巻く環境であるDPC,クリニカルパス、診療ガイドライン、病診連携などへの対応の重要性なども指摘するなど、著者の長年の医薬品企業における実務経験、さらには医業経営の知識などを背景に、幅広い視点から今後の医薬品マーケティングのあり方、組織体制のあり方などについても提言されており、医薬品マーケティングを広い視点で考えるのに役立つ書籍ですので、プロダクトマネジャーほか営業部門や各部門のマネジャーの方々も一読されてはいかがでしょうか。