「新しい時代に求められるMR像~信頼されるMRを目指して~」 (財)医薬情報担当者 教育センター 企画編集

本書は、薬事法や医療法などの医療環境の変化、製薬企業のグローバル化など業界環境の変化の中で、「薬物治療のパートナー」として社会や医師から求められるMR像、MRの果たすべき役割について、包括的かつ体系的にまとめられた書籍です。随所に実例も記載されているので、MRのみなさんにとっても具体的なイメージがわきやすいと思います。

また、中浜医院の中浜力先生ほか、仕事を通じて存じ上げている先生方が登場したり、本書の編集担当企画部長の小久保氏が、私が製薬企業在籍時の大先輩であったりと非常に身近に感じる書籍です。

本書の中で、特に印象的だった内容が2点あったので、紹介します。

特に印象的だったのは、『第4章「古い営業スタイルは通用しない』の「1.あたって砕けろは通用しない」で取り上げられている、中浜先生との協力で実施した“「医師とMRの面談」実態調査”において、調査対象となった11名のMRの面談が、一様に自社製品の都合の良い情報のみに偏らない、適切な「対話」が成り立った素晴らしい面談であったことでした。これは、その後に中浜先生ご本人からもその話を聞く機会があり、事実そのとおりだそうです。

先生ご本人やあとがきでも記されていますが、「相互の信頼関係に基づくコミュニケーション」があれば、医師~MR間の「有効な対話」が成り立つことを示した好例ではないでしょうか。こうしたケースが増えれば、MRが薬物治療のパートナーとして信頼されるとともに、一層医療に貢献できると確信します。

もう一例は、『第5章「MRの果たすべき役割』の「4.創薬・適応拡大などに関する情報の収集」で取り上げられている、エリスロマイシンの「びまん性汎細性気管支炎」の適応拡大のケースです。このケースは、日本医大の工藤翔二先生が、「びまん性汎細性気管支炎」が治癒した一人の患者さんがいるとの医療現場の情報をもとに、その証明に取り組んだ例であり、MRの貢献があった具体例ではありません。しかし、MRが医師との対話の中で、患者さんの具体的な処方例などを把握していれば、適応拡大を通じて医療へ貢献できる機会があること示す好例です。常に、先生方との「実践的な薬剤の使い方」にアンテナを張り巡らせることで、会社に対しても、患者さんに対しても貢献できる可能性があることがこのケースで示されていると思います。

MRの皆さんやマネジャーの方にも一読いただきたい一冊です。

⇒ 「新しい時代に求められるMR像~信頼されるMRを目指して~」